
募集型企画旅行拡大の為に何が?
清水港に寄港するクルーズ船乗客へのアプローチ
2024年もあと少しで終わるが、2021年に設立の一般社団法人静岡TaaSは、来年で4年目に入ろうとしている。
昨年10月から始めた清水港に寄港する大型クルーズ船への埠頭でのタクシーチャーター手配は、今年3月から本格化し、11月27日に今年最後のクルーズ船「ノルウェイジャン・スピリット」へのチャータータクシー配車業務で終えた。
昨年10月に、静岡県タクシー協会清水支部の依頼もあって、おそるおそる始めたタクシーチャーターは、当初は利用客もタクシー車両も少なく、1隻あたり数回しかなかったことから、この先どうなるかと案じられたが、今年の3月あたりから、利用客の増加につれて埠頭にやって来るタクシー車両数も増え始め、年間累計で38回の配車ブースの出店により、2300万円の取扱高、859台のチャータータクシーを配車することが出来た。
埠頭での即時手配ではあるが、清水港からは観光名所の日本平や三保の松原などの定番スポットだけでなく、富士山をより近い場所から見たいと、遠方の富士宮や箱根、さらには河口湖までの往復チャーター利用が発生した。そのチャーター時間も4時間から6時間、最高で8時間というケースもあった。
静岡TaaSが旅行会社として取り組んだ仕事としては、
①英語対応で出発前にコースの確定、②クレジットカ―ドでの事前決済、③旅客をスムーズにタクシーに案内して貸切での手配、④静岡市の通訳ボランティアとの連携、⑤特に貸切運賃とメーター運賃によるワンウエイが混在して混乱したことから、それを解決するため共通の順番待ちカードの発行、⑥そして9月からは埠頭での雨や風対策と宣伝を兼ねての特注の受付車両の設置、などである。
この一年で、清水港に寄港するクルーズ船の乗客には、チャータータクシー利用のニーズが確実にあると確信し、また、タクシー乗務員にとっても昼間における効率の良い仕事として、クルーズ船へのチャーター供給が定着した。
一方、埠頭でのタクシーチャーターには課題があることも明らかになった。
募集型企画旅行によるタクシーチャーター
以前、このコラムで埠頭でのチャーター手配は「水物」であると書いた。
確かに手配が短時間のうちに40回を超える日もあれば、10回に満たず閑古鳥が鳴くこともある。クルーズ船の規模、客層、天候、富士山の見え具合などによってチャーターの回数が大きく変動するのである。
この問題を解決するには、需要予測、配車タクシー車両の見える化とネットワーク化が必須だが、まずは事前の予約を取ることによって、需要と供給の安定化を図ることが必須だ。
静岡TaaSでは、現在でも世界的なOTA(インターネット旅行会社)の「Viator」などで企画旅行を募集し、クルーズ船1寄港につき1〜2回の注文を得ているが、これを飛躍的に増やしていきたい。そのために、静岡TaaS独自の英語ホームページ(https://travel.shizuoka-taas.com/)を通じて、そこから募集型企画旅行の申込を直接に受け、事前決済までを出来るようにした。課題としては、ある意味当然だが、世界的な大手OTAと比べ、知名度が圧倒的に低く、アクセスがまだまだ少ないことである。この点については、地道にSNSなどに利用客の投稿を促し(そのためには良い利用者体験が必要だが…)、存在感を高めていくしかない。
その一方で、パック旅行の供給体制を作って行く必要がある。具体的には、タクシー車両とガイドの両面での供給力を増やすことだ。パック旅行の場合、ジャンボタクシーやアルファードなどの特大車から予約が決まっていくケースが多いものの、静岡市内での特大車の数は限られており、供給はすぐ頭打ちになる。一方で、需要は大人数だけとは限らず、2〜3人での利用というケースもあり、ガイドを合わせても4人であれば普通車の活用も可能である。パック旅行のメニューに普通車を組み込み、その結果としての利用しやすい価格でのパック旅行をアピールしていく必要がある。
また、ガイドについても、やはり供給不足である。清水港では、あらかじめ大手旅行会社が船会社と提携して、チャーターバスを20〜30台も用意しており、その一台ごとにガイドが配置されている。
ガイドとしての国家資格である全国通訳案内士の数は少なく、またガイド料も高額で、少人数のタクシーでは効率が悪い。そこで、静岡Taa S では全国通訳案内士のほかに通訳案内士法の改正によって合法的に有償でのガイドが出来るようになった英語ガイドの募集と養成に加え、タクシー乗務員のガイド化を目指すことにした。
英語ガイドの募集と養成
静岡TaaSでは、クルーズ船が清水港に寄港しない12月から翌2月にかけて、集中的にクルーズ船客に特化した英語ガイドの募集と養成という取組を始めている。既に、11月10日と17日、12月13日と、3回にわたって説明会を開き、英語ガイドとしての応募と登録があった方々へのマニュアル提供と研修に入っている。
3月から再開されるクルーズ船客のパック旅行に、ガイドとして同行できるようにチャレンジしてもらう。静岡市には英語を学習し、その能力を活かす場を求めている方々が数多くいる。通訳ボランティアなどの機会もあるが、もう少し密度の濃い、そして報酬を伴う仕事を望んでいる人も多いとみており、是非そのような人に仕事の場を提供したい。
乗務員のガイド化を!
一方で、供給力も多く、かつ乗務とガイドを兼ねられるタクシー乗務員のガイド化は、利用客にとてもコストパフォーマンスが良い。乗務員のガイドは、英語をある程度は話すことができる英語乗務員と、通訳アプリなどを駆使できるアプリ乗務員の二つの段階がある。
現在のインバウンド客の中には、アプリなどを駆使して事前の情報収集能力が高い人も多く、全国通訳案内士や専門英語ガイドでなくても、ある程度の英語を話せるタクシー乗務員や通訳アプリを駆使できる乗務員など、コミュニケーションを取りながら観光地まで同行し、写真を撮ってくれれば十分という人たちもいる。そういう人たちが、このガイド乗務員を活用してくれればと思う。このガイド乗務員についても、静岡TaaSとしては、静岡市のタクシー協会と連携して研修を実施して行くことにしており、英語乗務員については、来年1月15、16、17の3日間のうちの任意の1日、アプリ乗務員については、同じく2月19、20、21の3日間のうちの任意の1日で、両方とも実施時間帯は、1月17日の午前9時30分〜11時30分以外は、すべて13時30分〜15時30分となっている。
研修を受けて認定されたタクシー乗務員には、資格証を発行し、静岡TaaSのパック旅行型チャーター手配の仕事をお願いすることになる。当然、それに伴い、タクシーの貸切運賃とガイドとしての報酬が発生する。また、従来からの清水港埠頭での貸切手配については、原則として埠頭での並び順による配車ではあるが、利用者から希望のあった時には、有資格者に優先的に配車されるケースが発生するかもしれない。
いずれにせよ、乗務員による英語でのコミュニケーションという点でも、おもてなしという点でも、レベルアップすれば利用者からの評価が上がり、需要の増加と静岡市の評価向上にも結び付くに違いない。改めて、2025年も前進の年でありますように!
(2024年12月16日記)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
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