タクシージャパン 掲載コラム

静岡市地域共同アプリの始動!

静岡地域版共同アプリの検討が始まった!

2月29日、静岡市タクシー協会が緊急の臨時会議を開き、そこで地域版共同アプリ導入の検討が提案された。その検討の背景としては
○配車プラットフォーマー参入による固定費(通信費や手数料等)の負担増
○ライドシェアを見据えた配車プラットフォーマーの地方参入への動きの加速
→既存の事業モデルでは「プラットフォーマーのお客様」をプラットフォーマーから依頼され、タクシーを運行→今後、アプリ利用料が高騰する可能性→下請け構造を抜け出せない。
○「地域版の共同配車アプリ」を導入することで「タクシー事業者が地元のお客様からの注文を直接的に獲得する」ことができる。そして、大手配車プラットフォーマーが担うお客様と棲み分けたうえで、地元客を維持、確保する必要がある、と提案されている。
 静岡TaaSとしては、この提案の趣旨に強く共感する。

タクシーは地域産業!

かつて、大手配車プラットフォーマーが全国化する際のお手伝いをした私自身の経験から、配車アプリは必ずしも全国的である必要はなく、地方での大半の移動ニーズは地域内に収まるものであり、その特定の地域における全体最適のマッチングシステムこそ必要だと痛感した。
 配車アプリを全国化するには巨額な資金が必要であり、また効率性のために全国一律の仕様となり、地域の実情に合わせたシステムを作りにくい。
 地域の移動産業のためには、地域の移動事情のもとに策定される地域公共交通計画を踏まえ、「社会性」と「事業性」を「両立する」地域独自の移動プラットフォームが必要であり、そもそも静岡TaaSは地域のタクシー事業者が運営にかかわれる一般社団法人としてその役割を果たすことを目指してスタートしたものだ。

静岡TaaSの現時点での役割

 2021年5月に設立した静岡TaaSは、まず各社の配車コストと配車スタッフの問題を解決するために配車業務の受託から始めた。しかしながら、タクシー事業者にとって配車業務を委託しても点呼コストの問題が解決できず、現時点では、2社からの業務受託に留まっている状況だ。
 また、タクシー会社の規模やサービス内容によっては配車業務を外部委託することが難しいケースもあり、配車コストの削減、相互配車の活用など一定の成果がありつつも、配車業務受託による共同配車化の進展は遅れている。
 今回の静岡市タクシー協会による地域版共同配車アプリ構想は、こうした各社の事情を乗り越え、地域全体の最適配車を一気に促進すると思われる。
 この仕組みは、各社の配車センターを維持しつつ、顧客の位置情報から直近の車両を、会社を問わず配車できるもので、顧客の利便性にとっても、また事業者にとっても機会損失を防げるという点で画期になると思われる。
 静岡TaaSでは既に、利用者向けアプリ「タク呼び」と、さらにアプリ登録が簡単なそのLINE版を運用しており、この地域版共同配車アプリの運営の受皿は整っている。
 さらに、各車両に搭載する配車依頼を受ける車載端末でも、一部の事業者ではあるが大きなコストメリットを提供できる。
 というのは、静岡市内に本社を置くタクシー専門ソフトハウス大手のシステムオリジンの配車システム【テレハイ】を使っているタクシー事業者は、新たな配車タブレット(ないしはスマートフォン)を設置することなく、同アプリからの注文を受けることができる。
 さらに通常、配車アプリからの注文は各社の配車センターを経由することなく、直接、車両に配信され、各社の配車センターでは関与できない。このことが配車センターの現場ではしばしばトラブルを生み、配車センタースタッフのストレスとなっている。
 地方では、配車アプリの利用は普及が遅く、現在も高齢者を中心に電話の注文が多く、その受付や配車をスタッフが担っているが、その際にアプリ配車で選ばれた車両が時間帯や天候によっては必ずしも最適でない場合も多く、配車室で判断しなくてはいけないケースが発生する。
 システムオリジンのシステムでは、そこが管理可能であり、また状況によって自動で車両に配車注文を配信する切り替えも出来るようになっている。幸いなことに静岡市内では比較的このシステムを使っているタクシー事業者が多いので、地域版共同アプリの普及にもお役に立てるのでないだろうか?
 参考までに、この地域版共同配車アプリがどのように運用され、各社との連携が行われるか、その全体システム概要を図として掲げておきたい。

第33回チームネクストセミナー合宿開催

この3月22日〜23日と、一年ぶりにチームネクストのセミナー合宿が開催された。
 今回のセミナーでは、モビリティに特化したシステム開発会社であるREAの社長で、山口第一交通の社長でもある坂田敬次郎氏から「AIオンデマンドの今と将来・タクシー会社のDX化」、S.RIDEの橋本洋平社長から「S.RIDEの今とこれから」というテーマで講演を聴いた。
 坂田社長からは、山口を中心に豊富でチャレンジングな取り組み事例を、橋本社長からは日本版ライドシェアや自動運転までを含めた「配車アプリの深化と進化」の内容を聴き、非常に勉強になった。
 また、今回初めて机を対面形式に並び替え、会員同士の意見交換を行った。テーマは今、ホットな話題である「ライドシェア!チャンスとして取り込むためにどうするか?」について、実に1時間半に及ぶ活発な議論となった。アメリカ型ライドシェアの議員立法は賛否が分かれる議員数からいって成立しないという見方が示される一方、今の政治的な動きからすれば何らかのレベルで合法化され、それに備えるべきとの意見もあった。
 私としては、4月から始まる「自家用車活用事業=タクシー版ライドシェア」をチャンスとして活用し、アメリカ型ライドシェアがいかなる形で決着しようとも、備えだけはすべきだと思う。今回の静岡地域版共同配車アプリについても、仮にタクシー版ライドシェアが静岡市で開始されることになった場合には対応できるよう準備することにしている。
 最近の報道では、ライドシェア・タクシー事業のハイブリッドによる併営を目的としたスタートアップ企業「newmo」が大阪の岸和田交通グループに資本参加したとのこと。今後もこうした動きが増えると思われるが、逆に、タクシー会社がライドシェアの動きをチャンスとして取り込めることの証左でもあると思う。
 静岡市のタクシー業界として地域共同アプリを立ち上げ、顧客基盤、配車基盤を強化し、この激変の時代に対処することが、ここ一年大きく問われると思う。静岡TaaSとして、是非そのお役に立ちたい。
(2024年3月25日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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