タク放題実証実験をひとまず終了
1年間の実証実験
昨年7月1日から開始した「タク放題」サービスが、いよいよ6月末に終了する。
また、今年の1月16日から「しずおかMaaS」(静岡型MaaS基幹事業実証プロジェクト)の委託事業として行っていた「のりあいサービス」も同様に6月30日をもって終了する。
「タク放題」は1年、「のりあいサービス」は6カ月という長丁場の実証実験ではあったが、現状のビジネスモデルでは持続的なサービスとしては運営できないというのが現時点での結論である。残念なことだが、しばらくの総括と準備期間を経て捲土重来を期することにしたい。
実証実験を終了するにあたって、この1年、サービスをご愛顧頂いた利用者会員に書面を送付し、お礼の挨拶をさせてもらった。以下がその文面である。
タク放題実証実験サービス終了のお知らせ
昨年の7月1日より12月30日まで第一次のタク放題実証実験サービスを開始させて頂き、さらに1月4日より6月30日まで第2次サービスを継続させて頂いていますが、6月末日を持って本実証実験を終了させて頂きます。
タク放題の会員の皆様には長期間の御愛顧、大変ありがとうございました。限定された地域、時間で限定された車両を借り上げる方式の今回の実証実験は一方で参加される会員も限定され、また繁忙時間帯では、皆様を長時間お待たせする事態も発生し、御迷惑をおかけしました。また持続するサービスであるための最低限の条件である、採算面での課題もクリアできませんでした。
タク放題のサービス自体は皆様からも高評価を頂き、是非サービスを継続するよう強い御要望も頂いております。
ひとまずこの1年間に渡る実証実験を検証し、持続的なサービスを継続するための様々な課題を整理し、皆様にご満足いただけるサービスを実装する為の条件づくりに努力したいと思います。
皆様のタク放題サービスへの評価や要望、不満について、弊社のアンケート調査に御協力頂き、今後の参考にさせて頂きたいと思います。是非ご協力をお願いいたします。
尚1年間のタク放題サービスについて検証報告会を7月27日14時から東静岡のグランシップ10階の1003号室に於いて行いますのでお時間のある方は是非ご参加ください。
今後とも静岡市の移動の課題にチャレンジする静岡TaaSをよろしくお願いします。
一般社団法人静岡TaaS
代表理事 清野吉光
この挨拶文と共に利用者会員のタク放題サービスへの率直な声を聞くためにアンケートを送付し、回答をお願いした。現在返送されているアンケートの内容をみると、このサービスの存続を強く望む意見が多い。これは「タク放題」を担当した乗務員からも、お客様の声として同様の意見が寄せられている。
静岡TaaSとしても、このサービスを続けたいという思いは強くあるが、しかし現時点では、民間による持続的なサービスとしては必須である採算面での継続性が担保できない。この現実をしっかりと受け止めた上で、こうしたサブスクサービスをあきらめるのではなく、どのようにしてこのサービスを実装、持続できるのかについて、この一年間の実証実験の経験を総括し、研究して行きたい。そして、願わくは、来年度には再度、「新生タク放題」としてサービスを再開させたいと思っている。そのための方策を考えてみた。
「人材育成事業」への応募
実は、この4月に国土交通省総合政策局地域交通課から「令和5年度共創モデル実証プロジェクト(共創による地域交通形成支援事業)」公募要領が発表された。このプロジェクトは以前からあったが、今年度は予算も拡充され、力の入った企画になっている。特に今年度から「共創モデル実証運行事業」に加え、「人材育成事業」が補助事業の対象になっている。
静岡TaaS自体が、この共創モデルの目的である「地域の多様な関係者の『共創』(連携・協働)により、地域公共交通のネットワークの【リ・デザイン】(再構築)を進め、利便性・持続可能性・生産性を高める」ことを目指しているのだが、残念ながら現時点では、いまだ共創パートナーも僅かで、静岡市内におけるネットワーク作りの実績も少ない。そこで今年度は、「地域交通を軸とした共創の取組の促進・普及に向け、市域における交通やまちづくりに取り組む人材の育成に関する仕組みの構築や運営を行う事業」の「人材育成事業」に特化し、来年令和6年度の「共創モデル実証運行事業」=「新生タク放題&のりあいサービス」に挑戦しようと考えている。
静岡TaaSが果たして人材育成事業を担えるか?
静岡TaaSが人材育成面で寄与できるとしたら、それはこの1年間における地域の新たな移動需要創出の挑戦としての「タク放題」と「のりあいサービス」の経験と、その正反両面での教訓化である。利用者会員の獲得活動、サービスエリアと運行時間、価格、プリペイド方式の是非、タクシー車両の借上げ方式の限界、需給の変動に対するフレシキブルな対応の仕組み、地域住民とのコミュニケーションの試み、福祉関係者との接点など、どちらかというと反面教師の経験が多いが、しかし、ラストワンマイルにおける持続的なサービスを実装するために必要な課題はかなり鮮明になりつつある。
そうした課題を有識者のセミナーでの提言を踏まえて現場関係者の活発なパネルディスカッションを継続的に行うことによって、来年度の共創モデル実証運行事業=「新生タク放題&のりあいサービス」を共に担う人材が育成できるのではないかと思う。その対象は、地域の行政、介護・福祉関係者、地域交通関係者、大学の研究者、学生、地域のまちづくりのボランティアなどが想定される。
ちなみにセミナーのスケジュールとテーマとしては、
8月:「タク放題」実証実験の経過、総括と提言
9月:「のりあいサービス」実証実験の経過、総括と提言
10月:需給変動に柔軟に対処するための配車システム(共同配車とAI)
11月:地域の移動ニーズの実状と課題
12月:サブスクユーザーを獲得するためのマーケティングと獲得方法
1月:移動手段の供給力確保のための手段としての事業者協力型自家用有償旅客運送の活用
2月:共創型モデル実証運行における「タク放題&のりあいサービス」実装コンソーシアム
の始動
まずは令和5年度の共創モデル実証プロジェクトの人材育成事業に応募し、採択を目指すところから再チャレンジを開始してみようと思う。
(2023年5月23日記)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
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