日本版地域ライドシェアを目指せⅡ!
東タク協の日本型ライドシェアガイドライン案
昨年の12月20日、「デジタル行財政改革中間とりまとめ」において、国土交通省が提起した道路運送法78条3号に基づく新制度としての「タクシー事業者を実施主体として地域的・時間的・期間的タクシー不足を自家用車と一種限定免許者で補完する自家用有償旅客運送の活用拡大=限定型日本版ライドシェア」を盛り込み、制度の詳細を詰めた制度設計をしたうえで今年の4月から導入されることになった。
これを受けて、本年1月10日には、国土交通省の「詳細な制度設計」に先行する形で、東京ハイヤー・タクシー協会(川鍋一朗会長)から「日本型ライドシェア東京ハイヤー・タクシー協会ガイドライン(案)」が発表された。
昨年末の中間取りまとめから、ひと月もしないうちに協会としての日本型ライドシェア(RS)ガイドライン案の発表は恐るべき迅速な対応である。それだけ川鍋会長をはじめとする東京業界幹部の危機感は強いということだと思う。
以下、日本型RSのガイドライン案の抜粋
❶運行形態
○タクシー事業者がタクシーと同等の運行管理・整備管理を実施
○アプリからの配車のみ対応(支払いは配車アプリ内のみで実施)
○運賃はタクシーと同等(事前確定運賃)
○点呼は車両内での遠隔点呼を予定(規制緩和が必要)
❷運行方法
タクシーが不足する地域・時期・時間帯のみ運行
❸ドライバー条件
ドライバーは普通免許または二種免許保持者
○20才以上70才未満
○普通免許取得後1年以上経過
○タクシー会社とパート等の雇用契約を結ぶ
○タクシー会社による初任教育と継続教育を実施
❹車両条件
車両は自家用車両(白ナンバー)
○定員5人以上10人以下の車両
○衝突被害軽減ブレーキを必須とする
○通信型ドライブレコーダーを必須とする
なお、車両については、当初はタクシー遊休車両もあったが、検討の過程で外されたとのこと。一種免許でのタクシー車両の運行は制度上の制約などから難しいとは思うが、ひとつの有効な選択肢ではないだろうか。
本番は来年4月!
最近、タクシー業界の重要なポジションにいる社長のお話を個人的に聞く機会があった。その方の見通しでは、6月にはレベルはどうあれ何らかの形でライドシェア解禁の決定がなされ、秋には議員立法での国会審議、来年の4月には施行されるだろう、というものだった。それまでにそれに対抗できる体制を如何にタクシー業界が作れるか、が課題となるとのことだった。そのためには、少なくとも今年4月迄には主要大都市ではタクシー事業者による日本版ライドシェアを稼働させねばならず、そして遅くとも来年4月までにタクシー業界全体が移動需要に応えるライドシェアを含む供給体制を構築せねばならないとのことだった。そして、タクシー事業者がバラバラにこの事態に対処するのではなく、配車アプリを運用している配車プラットフォームも一元化し、連携・連合を目指すべきとの考えだった。
さらに、何らかの形でライドシェア解禁となれば、正直なところ、海外の所謂ライドシェアプラットフォーマーは資本力も強大で、運転者や車両の質を選別して利用者とマッチングする仕組みを備えており、今のタクシー業界の少なくない事業者がそのままでは対抗できるとは思えないし、タクシー事業者自体が自分たちを大きくレベルアップできなければ淘汰され、タクシー業界の再編・統合も進むだろうとの見方も示していた。
タクシー事業者にとって大変な時代ではあるが、逆に移動需要と供給の拡大を図れるチャンスとも言える。この1年をどう活用できるかによって、それが決まるのではないかと思う。
問題は地方の移動!
東タク協のガイドライン案発表に応ずる形で、タクシー向けアプリ配車プラットフォームのGO株式会社が日本型ライドシェアのシステム構築とタクシー事業者向けの相談窓口を開設した。
そして、4月のサービス開始に向けて全国主要都市での稼働の準備を進めていると聞く。恐らく全国の主要な大都市では地域特性に応じたタクシー事業者による日本版ライドシェアの供給開始が期待できると思われる。
しかし、地方都市では単にライドシェアに対応した配車プラットフォーマーが進出しただけでは地域特有の移動課題を解決できないと思われる。都市部では移動需要が膨大にあり、また人的な供給力も一種免許を使える自家用有償旅客運送を活用すれば豊富だと思われ、また収入面でもそれなりに魅力的な仕事になり得るだろう。しかし、地方都市では移動需要も絶対数が少なく、ニーズが多様なうえに効率も低く、また供給も限られる。とりわけ、中山間地ではこうした理由から移動難民が発生していることから、自治体主導によるボランティア的な自家用有償旅客運送の展開も期待されている。そうした中で、こうした地方に果たして営利的なライドシェアが進出するだろうか?また、進出しても稼げなければ、果たしてシェアドライバーが集まるだろうか?やはり、地方については単純に車が足りないからライドシェアで補うという方程式が成り立たないと思われる。だからこそ、国土交通省が昨年10月に「改正地域公共交通活性化・再生法」(地域交通法)を施行し、各自治体が「地域公共交通計画」を作成し、責任をもって実施するよう要請したのだろう。
ライドシェアが公共交通になり得るか否かの議論はあると思うが、少なくともタクシーは公共交通であり、地域公共交通のラストワンマイルを担う重要な移動手段であり、そのタクシーが主体となって取り組む日本版ライドシェアは、特に地方の地域公共交通計画の中に組み込まれ、その一分野としてのみ有効に活用されるべきであると思う。
静岡TaaSの取り組み
私が代表理事を務める静岡TaaSは、2021年5月の設立以来、静岡市におけるタクシー事業の生産性向上の仕組みとして共同配車化と閑散時の新規需要開拓の試みとして「タク放題」などのサービスを展開してきたが、現在この日本版ライドシェアの静岡市での実現のためのサービスを検討中である。日本版ライドシェアを全国展開するサービスとの連携も含めて静岡市の地域公共交通計画に合わせた移動のプラットフォームの一翼を担いたいと思う。ライドシェア解禁問題の中で、このままだと消滅の危機さえあるタクシー事業が、逆にこの危機をチャンスに変えて新たな事業を開拓するきっかけに静岡TaaSが役立てるよう努力をして行きたいと思う。改めて、本年もよろしくお願いします。
(2024年1月22日記)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
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