
静岡市が初開催する共創コンテスト『UNITE』&『BRIDGE』への挑戦
『「新たな価値の創造・共創」の時代の実務家公務員の技術力』
この小見出しは、前の静岡県副知事で現静岡市長の難波喬司氏の2018年出版の著書の表題である。
聞くところによると、公務員の方たちの中ではベストセラーとのこと。私も読ませてもらったが、公務員向けの実務書というより、経営者と経営幹部向けの思想(何をなすべきか)と、その実現のための「能力を磨く」実践書ではないかと思う。
こうした書籍が公務員の方たちに受け入れられ、実践されるならば、我々の持つステレオタイプな公務員像も変わって来るのではないかと思う。
そうした難波市長に率いられる静岡市が、まさに「新たな価値の創造・共創」を喚起する共創コンテスト『UNITE』&『BRIDGE』を主催する。
行政課題解決型の『UNITE』
『UNITE』は、静岡市の各行政部署が、行政課題として掲げる20のテーマを解決する共創プロジェクトを募るものである。
静岡TaaSとしては今回、観光政策課が設定したテーマ【インバウンド観光客に対してのプロモーション活動が不十分。クルーズ船で寄港する観光客向けに、寄港前にPRを行えていない】について、二つの施策で応募しようと思う。
一つ目は、在日カナダ人や英国人スタッフによる日の出埠頭でのインタビュー動画の撮影とYouTubeによる拡散である。
二つ目は、富士山の景観に頼らない静岡の食、体験、穴場景観の一つ一つを、清水港からの英文PORT CARDとして作成、継続的に日の出埠頭で配布し、リピート率が高い一方でSNSが不得手な高齢者層に浸透を図ることである。
一見、極めてアナログ的ではあるが、QRコードを活用し、カードをきっかけに興味深い情報に高齢者がアクセスできるようにしたい。
スタートアップ提案型の『BRIDGE』
『BRIDGE』は、テーマを絞らずに、広く静岡市の持つ課題をスタートアップの創造力と地元企業・団体との共創によって、課題を解決しようというもの。まさに創立3年目のスタートアップである静岡TaaSとしては、願っていた企画だ。今回は、【清水港クルーズ船寄港顧客向け観光タクシーマルチプラットフォーム事業】というテーマで、このコンテストにチャレンジしたい。
現状のクルーズ船チャータータクシー手配の課題
先のコラムで書いたように、清水港へのクルーズ船の寄港回数、インバウンド客数は確実に増えており、さらに来年から日の出埠頭での2隻同時着岸が可能になることによって、一層増加すると思われる。
また、埠頭でのタクシーチャーターの受け入れ体制が徐々に整備されたことにより、多い時で1日46回、取扱高も120万円を超えた。しかし、埠頭でのチャーター利用には不確実性があり、このため寄港前の事前予約型のチャーターを増やす必要がある。そのためには、インターネット上での予約の仕組みを構築し、タクシー車両とガイド要員の増加と確保、さらにインバウンド客と供給側のタクシーの効率的なマッチングを行う静岡市全体の共創プラットフォームを作る必要がある。
以下、コンテストの提案書風に記述すると…
事前予約型チャータータクシー拡大の3つのネック
①インバウンド客に魅力のある静岡市の観光コース、とりわけタクシーというフレキシブルな移動手段を活用した、最近の海外個人旅行客が楽しめる食と体験の旅程が寄港前に提案されていないこと
②今までの事前予約の多くは乗車人員が5人以上の特大車に集中している一方で、静岡市内のタクシー事業者が保有する台数は十数台しかなく、供給力に限りがあること
③インバウンド客に対応できる外国語(主に英語)ガイドが不足している。2018年の通訳案内士法の改正により、国家資格である全国通訳案内士でなくても有料でガイドをすることが可能になったが、そうしたガイドがまだ組織化されておらず、数も少ない。また、ガイド能力の基準もなく、質も担保されていないこと
これら3つの大きなネックの解決策
①の解決策
世界有数の観光コンテンツである富士山を軸に、外国人目線からの魅力ある観光コンテンツ(自然、食、体験など)を数多く揃え、そのコースをビジュアル化してインバウンド客に事前に情報提供し、事前予約に誘導する
②の解決策
インバウンド客の中でも夫婦や小家族などの2人ないし4人向けの観光コースを用意し、特大車ではなく供給台数が多い普通車の利用を図る
③の解決策
全国通訳案内士などの外国語ガイドの組織化やネットワーク化を図るだけでなく、タクシー乗務員のガイド化を図る。特に乗務員の中にはすでに英検2級レベル以上の英語力を持つものが存在する。さらに現在の通訳アプリの高性能化、ポケトークなどの通訳専用機が普及しており、それらを使いこなすことができる乗務員が一定数存在する。このレベルの乗務員を静岡県タクシー協会の清水支部や静岡支部と連携して、ホスピタリティ面も含めて教育、組織化してネットワーク化することが、増大するインバウンド客への供給力を高める上で、決定的な鍵である。
通訳案内士、英語ガイド、英語乗務員、通訳アプリ乗務員の、この4段階のガイドと特大車、普通車の組み合わせをインバウンド客のニーズに合わせて提供できるプラットフォームを作ることが、ネック解消の解である。
具体的には
①について
外国人目線からの観光コースの策定については、在日カナダ人や英国人である弊社のサポーターが、外国人目線によるコースメニューの動画を作成し、日の出埠頭でのインタビューを行い、YouTubeなどで拡散をして行く。
また、地元旅行会社と共創し、世界的オンライン旅行会社のViatorなどを通じて事前予約型チャータータクシーの受注を増やすと共に、チャータータクシー利用のインバウンド客にSNSへの投稿を働きかけ、その拡散を通じて、静岡の旅行会社への直接のアクセス、受注を図る
②について
静岡県タクシー協会静岡支部・清水支部と共創し、特大車のネットワーク化のみならず、普通車(ジャパンタクシー、黒タク)の事前予約型チャータータクシーへの活用を図る
③について
通訳案内士との連携や英語ガイドの養成も行っている、静岡市内のガイドボランティア団体である駿府ウェイブ国際部との連携、DMOするが企画観光局傘下の清水港での通訳ボランティアとの協業、さらに量的に一番供給力が期待される、英語乗務員、通訳アプリ乗務員の養成とネットワーク化について、静岡県タクシー協会との共創を図っていく
コンテストはきっかけに過ぎない
今回提案する企画が、静岡市のコンテストに選ばれる、選ばれないに関わらず、クルーズ船インバウンド客は、静岡の観光産業とタクシー業界にとっては是非とも必要なものだと思うので、その実現に向けてチャレンジして行きたい!
(2024年7月27日記)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
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