「静岡夜景ナビゲータ」への挑戦
夜景ナビゲータ養成講座
前回のコラムの表題は「クルーズ船客への手配旅行の挑戦」だった。今回も「静岡夜景ナビゲータへの挑戦」と、「挑戦」続きなので、挑戦も結構だが結果はどうなんだ?と聞かれそうだが、残念ながら良い結果はまだまだ簡単には出そうもない。
しかし、幸いなことに、「挑戦」の機会だけは次々と与えられているので、有難いことだ。
静岡市の観光・MICE推進課が11月8日と15日の2日間にわたり、「静岡市夜景ナビゲータ養成講座」を開催した。静岡TaaSからも私を含めて3人が参加したが、この講座は結構盛況で、市内の旅行事業者、ホテル、通訳ガイド、ボランティアガイド、タクシー事業者などから、30人の定員がほぼ満席になるくらいの参加者があった。養成講座では、1日目に座学、2日目の夜に実地研修があり、2日間とも(一社)夜景観光コンベンション・ビューローの丸々もとお理事長による座学講義と夜景観光実地研修での指導があった。
丸々理事長は、1992年の「東京夜景」上梓以降、夜景評論家として活躍されている方で、夜景の魅力を観光学、景観学、色彩心理学などから学際的に評論する、独自の「夜景学」確立に取り組んでいる。我々はたかが「夜景」と安易に考えがちだが、その奥行きの深さに今回の養成講座で改めて感じ入った次第である。特に今回の講座のテキストに使われた104ページにわたる「静岡夜景ナビゲータガイドマニュアル」は、「夜景視点」、「日本の夜景視点」の総論から、静岡市の夜景調査に基づく「静岡夜景 情報視点」、「静岡夜景 分析視点」を網羅していて、まさに静岡市の夜景ナビゲータガイドマニュアルとして非常に充実したものである。
3時間半ほどの座学ではとても吸収しきれず、じっくりと読み込む必要があるテキストである。今回、このテキストに基づいた座学と実際の実地研修がわずか一週間しか間がなかったので、実地研修での参加者全員に課されたランダムなテストに、私自身が未消化なまま夜景説明をすることになり、夜景ガイドではなく、自分の夜景原体験と静岡市の夜景観光の豊富さの改めての気付き、夜景観光ツアーへの取り組みへの決意表明のみに終始してしまった。
「夜景学」とガイド
ガイドとは難しいものである。
私は、東京において東京ハイヤー・タクシー協会の講習に出て、一応はガイド役である「東京都地域限定通訳案内士」の資格を持っている。しかし、これは完全な”ペーパドライバー“で、恥ずかしいことだが、ガイド以前に英会話が覚束ない、というのが実情だ。また、静岡市の駿府ウエイブが指導する観光ボランティアガイドの講習にも静岡TaaSのスタッフと共に参加しているが、ますますガイドの難しさを実感するばかりだ。
夜景ガイドもそうだが、単に知識を披露する(これだけでも大変だが)だけではガイドは務まらないらしい。優秀なガイドは、その時々の観光客の多様な興味や関心に合わせて、かつガイド自身の個性や人間味を発露して、ガイドの現場を一種一場の演劇のように創造、作り上げていくらしい。ましてや夜景ともなると、その物語性をしっかりと掘り下げないと、ガイドという名に値しない浅薄なものになってしまうそうだ。
座学において、丸々理事長が最初に言ったことは、夜景を説明する際に「綺麗」「すばらしい」という言葉を封印して下さい、ということで、印象的であった。そして自分自身の夜景原体験を振り返るよう提案された。我々が単に夜景知識を披露するのではなく、夜景ナビゲータを志す自分自身の物語をしっかり抑えた上でガイドをする必要があると言っているのだと思う。いみじくも、丸々理事長の「夜景学」では、「夜景観賞」とは表現せずに、すべて「夜景鑑賞」と表記するとのこと。
「これは夜景を『鑑賞しうる芸術的作品』として捉えているため、美術鑑賞の鑑賞と同意語としています」1992年丸々もとお) 「夜景学」の全貌に興味を持たれた方は是非、丸々もとお理事長の著作をご覧ください。
養成講座修了後アンケート
養成講座修了後、主催した静岡市観光・MICE推進課によるアンケートの回答要請があった。充実した養成講座であったので、アンケートも一所懸命に書かせてもらった。そこで、少しでも養成講座の内容を共有できたらと思い、私の回答内容の一部をここに転載させてもらう。
Q1.座学講座について
A1.日本平夜市について、その発祥の経緯や現状について松木さん(発起人)から直接詳しくお話を聞けて良かった。頑張ってここまで発展させて来たことに敬意を表します。
丸々先生の講義は、夜景鑑賞を「夜景学」まで深めてきた奥行を感じました。静岡夜景ナビゲータマニュアルも内容が豊富で、特に静岡夜景視点は実地調査に基づく貴重な資料だと思います。静岡夜景のオリジナリティをしっかり把握し、ガイドのトークの中に反映することが大事だと感じました。
Q2.実地研修について
A2.座学での知識が実際の夜景の中で説明できるかが問われたと思いますが、私の場合、まだ道は遠いと感じました。全員がテストを受けたのは緊張感があり、良かったと思います。また、それぞれの説明の評価、課題をその場で指摘して貰ったのは非常に勉強になったと思います。
Q6.感想、意見
A6.日本平からの夜景はあまりにも有名ですが、夜景遺産に指定された梶原山公園からの夜景は実際に見に行く人は少ないと思います。日本平から見る夜景を梶原山公園からは丁度反対側の対面から見る形になり、同じエリアを別視点で見ることになり、印象深いと思います。
特に、「道が主役となる夜景」という点では梶原山公園は眼下に東名、バイパス、新幹線が走っており、「別視点で見る」価値が分かり易いと思います。静岡の夜景は、夜景の多くの視点場が比較的狭いエリアで短時間に回れることに優位性があると思います。問題は移動の手段ですが、ジャンボタクシーによるツアーに最適だと思われます。是非そのようなモニターツアーが企画できたらと思います。(以上)
静岡夜景ツアーへの挑戦
既に静岡市では、コロナ禍の中でも昨年から、夜景観光ツアーを千代田タクシーが先陣を切って実施しており、好評を博している。私自身も昨年にこの夜景ツアーを体験し、日本平の夜景を満喫した。ここに夜景観光ナビゲータが如何に付加価値を付けることが出来るかだ。静岡市は、潜在的に夜景観光の資源を沢山もっていると思うので、課題となっている静岡市での宿泊が少ないという問題の解決の助けにもなるのではないかと思う。夜景ナビゲータの活躍が期待されるところである。
(2023年11月23日記)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
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